第4章 親権
第1節 総則 (第808条・第809条)
第818条 (親権者)
成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2 子が養子であるときは、養親の親権に服する。
3 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。
第819条 (離婚又は認知の場合の親権者)
父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
3 子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。
4 父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。
5 第一項、第三項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
6 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。
第2節 親権の効力 (第820条―第833条)
第820条 (監護及び教育の権利義務)
親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。
第821条 (居所の指定)
子は、親権を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければならない。
第822条 (懲戒)
親権を行う者は、第820条(監護及び教育の権利義務)の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。
第823条 (職業の許可)
子は、親権を行う者の許可を得なければ、職業を営むことができない。
2 親権を行う者は、第6条第2項(未成年者の営業許可の取消し又は制限)の場合には、前項の許可を取り消し、又はこれを制限することができる。
第824条 (財産の管理及び代表)
親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。
第825条 (父母の一方が共同の名義でした行為の効力)
父母が共同して親権を行う場合において、父母の一方が、共同の名義で、子に代わって法律行為をし又は子がこれをすることに同意したときは、その行為は、他の一方の意思に反したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。
第826条 (利益相反行為)
親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
第827条 (財産の管理における注意義務)
親権を行う者は、自己のためにするのと同一の注意をもって、その管理権を行わなければならない。
第828条 (財産の管理の計算)
子が成年に達したときは、親権を行った者は、遅滞なくその管理の計算をしなければならない。ただし、その子の養育及び財産の管理の費用は、その子の財産の収益と相殺したものとみなす。
第829条
前条ただし書の規定は、無償で子に財産を与える第三者が反対の意思を表示したときは、その財産については、これを適用しない。
第830条 (第三者が無償で子に与えた財産の管理)
無償で子に財産を与える第三者が、親権を行う父又は母にこれを管理させない意思を表示したときは、その財産は、父又は母の管理に属しないものとする。
2 前項の財産につき父母が共に管理権を有しない場合において、第三者が管理者を指定しなかったときは、家庭裁判所は、子、その親族又は検察官の請求によって、その管理者を選任する。
3 第三者が管理者を指定したときであっても、その管理者の権限が消滅し、又はこれを改任する必要がある場合において、第三者が更に管理者を指定しないときも、前項と同様とする。
4 第27条(管理人の職務)から第29条(管理人の担保提供及び報酬)までの規定は、前二項の場合について準用する。
第831条 (委任の規定の準用)
第654条(委任の終了後の処分)及び第655条(委任の終了の対抗要件)の規定は、親権を行う者が子の財産を管理する場合及び前条の場合について準用する。
第832条 (財産の管理について生じた親子間の債権の消滅時効)
親権を行った者とその子との間に財産の管理について生じた債権は、その管理権が消滅した時から五年間これを行使しないときは、時効によって消滅する。
2 子がまだ成年に達しない間に管理権が消滅した場合において子に法定代理人がないときは、前項の期間は、その子が成年に達し、又は後任の法定代理人が就職した時から起算する。
第833条 (子に代わる親権の行使)
親権を行う者は、その親権に服する子に代わって親権を行う。
第3節 親権の喪失 (第834条―第837条)
第834条 (親権喪失の審判)
父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権喪失の審判をすることができる。ただし、二年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、この限りでない。
第834条の2 (親権停止の審判)
父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権停止の審判をすることができる。
2 家庭裁判所は、親権停止の審判をするときは、その原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間、子の心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、二年を超えない範囲内で、親権を停止する期間を定める。
第835条 (管理権喪失の審判)
父又は母による管理権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、管理権喪失の審判をすることができる。
第836条 (親権喪失、親権停止又は管理権喪失の審判の取消し)
第834条本文(親権喪失の審判)、第834条の2第1項(親権停止の審判)又は前条(管理権喪失の審判)に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人又はその親族の請求によって、それぞれ親権喪失、親権停止又は管理権喪失の審判を取り消すことができる。
第837条 (親権又は管理権の辞任及び回復)
親権を行う父又は母は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を辞することができる。
2 前項の事由が消滅したときは、父又は母は、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を回復することができる。
第5章 後見
第1節 後見の開始 (第838条)
第838条
後見は、次に掲げる場合に開始する。
一 未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき。
二 後見開始の審判があったとき。
第2節 後見の機関
第1款 後見人 (第839条―第847条)
第839条 (未成年後見人の指定)
未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。ただし、管理権を有しない者は、この限りでない。
2親権を行う父母の一方が管理権を有しないときは、他の一方は、前項の規定により未成年後見人の指定をすることができる。
第840条 (未成年後見人の選任)
前条の規定により未成年後見人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によって、未成年後見人を選任する。未成年後見人が欠けたときも、同様とする。
2 未成年後見人がある場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項に規定する者若しくは未成年後見人の請求により又は職権で、更に未成年後見人を選任することができる。
3 未成年後見人を選任するには、未成年被後見人の年齢、心身の状態並びに生活及び財産の状況、未成年後見人となる者の職業及び経歴並びに未成年被後見人との利害関係の有無(未成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と未成年被後見人との利害関係の有無)、未成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。
第841条 (父母による未成年後見人の選任の請求)
父若しくは母が親権若しくは管理権を辞し、又は父若しくは母について親権喪失、親権停止若しくは管理権喪失の審判があったことによって未成年後見人を選任する必要が生じたときは、その父又は母は、遅滞なく未成年後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。
第842条 削除
第843条 (成年後見人の選任)
家庭裁判所は、後見開始の審判をするときは、職権で、成年後見人を選任する。
2 成年後見人が欠けたときは、家庭裁判所は、成年被後見人若しくはその親族その他の利害関係人の請求により又は職権で、成年後見人を選任する。
3 成年後見人が選任されている場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項に規定する者若しくは成年後見人の請求により、又は職権で、更に成年後見人を選任することができる。
4 成年後見人を選任するには、成年被後見人の心身の状態並びに生活及び財産の状況、成年後見人となる者の職業及び経歴並びに成年被後見人との利害関係の有無(成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と成年被後見人との利害関係の有無)、成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。
第844条 (後見人の辞任)
後見人は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。
第845条 (辞任した後見人による新たな後見人の選任の請求)
後見人がその任務を辞したことによって新たに後見人を選任する必要が生じたときは、その後見人は、遅滞なく新たな後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。
第846条 (後見人の解任)
後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、後見監督人、被後見人若しくはその親族若しくは検察官の請求により又は職権で、これを解任することができる。
第847条 (後見人の欠格事由)
次に掲げる者は、後見人となることができない。
一 未成年者
二 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
三 破産者
四 被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
五 行方の知れない者
第2款 後見監督人 (第848条―第852条)
第848条 (未成年後見監督人の指定)
未成年後見人を指定することができる者は、遺言で、未成年後見監督人を指定することができる。
第849条 (後見監督人の選任)
家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被後見人、その親族若しくは後見人の請求により又は職権で、後見監督人を選任することができる。
第850条 (後見監督人の欠格事由)
後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は、後見監督人となることができない。
第851条 (後見監督人の職務)
後見監督人の職務は、次のとおりとする。
一 後見人の事務を監督すること。
二 後見人が欠けた場合に、遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求すること。
三 急迫の事情がある場合に、必要な処分をすること。
四 後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること。
第852条 (委任及び後見人の規定の準用)
第644条(受任者の注意義務)、第654条(委任の終了後の処分)、第655条(委任の終了の対抗要件)、第844条(後見人の辞任)、第846条(後見人の解任)、第847条(後見人の欠格事由)、第861条第2項(後見の事務の費用)及び第862条(後見人の報酬)の規定は後見監督人について、第84条第三項(未成年後見人の選任の事情考慮)及び第857条の2(未成年後見人が数人ある場合の権限の行使等)の規定は未成年後見監督人について、第843条第4項(成年後見人の選任の事情考慮)、第859条の2(成年後見人が数人ある場合の権限の行使等)及び第859条の3(成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可)の規定は成年後見監督人について準用する。
第3節 後見の事務 (第853条―第869条)
第853条 (財産の調査及び目録の作成)
後見人は、遅滞なく被後見人の財産の調査に着手し、一箇月以内に、その調査を終わり、かつ、その目録を作成しなければならない。ただし、この期間は、家庭裁判所において伸長することができる。
2財産の調査及びその目録の作成は、後見監督人があるときは、その立会いをもってしなければ、その効力を生じない。
第854条 (財産の目録の作成前の権限)
後見人は、財産の目録の作成を終わるまでは、急迫の必要がある行為のみをする権限を有する。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
第855条 (後見人の被後見人に対する債権又は債務の申出義務)
後見人が、被後見人に対し、債権を有し、又は債務を負う場合において、後見監督人があるときは、財産の調査に着手する前に、これを後見監督人に申し出なければならない。
2 後見人が、被後見人に対し債権を有することを知ってこれを申し出ないときは、その債権を失う。
第856条 (被後見人が包括財産を取得した場合についての準用)
前3条の規定は、後見人が就職した後被後見人が包括財産を取得した場合について準用する。
第857条 (未成年被後見人の身上の監護に関する権利義務)
未成年後見人は、第820条(監護及び教育の権利義務)から第823条(職業の許可)までに規定する事項について、親権を行う者と同一の権利義務を有する。ただし、親権を行う者が定めた教育の方法及び居所を変更し、営業を許可し、その許可を取り消し、又はこれを制限するには、未成年後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。
第857条の2 (未成年後見人が数人ある場合の権限の行使等)
未成年後見人が数人あるときは、共同してその権限を行使する。
2 未成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、その一部の者について、財産に関する権限のみを行使すべきことを定めることができる。
3 未成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、財産に関する権限について、各未成年後見人が単独で又は数人の未成年後見人が事務を分掌して、その権限を行使すべきことを定めることができる。
4 家庭裁判所は、職権で、前二項の規定による定めを取り消すことができる。
5 未成年後見人が数人あるときは、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りる。
第858条 (成年被後見人の意思の尊重及び身上の配慮)
成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。
第859条 (財産の管理及び代表)
後見人は、被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について被後見人を代表する。
2 第824条(財産の管理及び代表)のただし書の規定は、前項の場合について準用する。
第859条の2 (成年後見人が数人ある場合の権限の行使等)
成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、数人の成年後見人が、共同して又は事務を分掌して、その権限を行使すべきことを定めることができる。
2 家庭裁判所は、職権で、前項の規定による定めを取り消すことができる。
3 成年後見人が数人あるときは、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りる。
第859条の3 (成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可)
成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
第860条 (利益相反行為)
第826条(利益相反行為)の規定は、後見人について準用する。ただし、後見監督人がある場合は、この限りでない。
※平成28年10月13日施行 成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成28年法律第27号)新設
第860条の2(成年後見人による郵便物等の管理)
家庭裁判所は、成年後見人がその事務を行うに当たって必要があると認めるときは、成年後見人の請求により、信書の送達の事業を行う者に対し、期間を定めて、成年被後見人に宛てた郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律 (平成十四年法律第九十九号)第二条第三項 に規定する信書便物(次条において「郵便物等」という。)を成年後見人に配達すべき旨を嘱託することができる。
2 前項に規定する嘱託の期間は、六箇月を超えることができない。
3 家庭裁判所は、第一項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、成年被後見人、成年後見人若しくは成年後見監督人の請求により又は職権で、同項に規定する嘱託を取り消し、又は変更することができる。ただし、その変更の審判においては、同項の規定による審判において定められた期間を伸長することができない。
4 成年後見人の任務が終了したときは、家庭裁判所は、第一項に規定する嘱託を取り消さなければならない。
第860条の3
成年後見人は、成年被後見人に宛てた郵便物等を受け取ったときは、これを開いて見ることができる。
2 成年後見人は、その受け取った前項の郵便物等で成年後見人の事務に関しないものは、速やかに成年被後見人に交付しなければならない。
3 成年被後見人は、成年後見人に対し、成年後見人が受け取った第一項の郵便物等(前項の規定により成年被後見人に交付されたものを除く。)の閲覧を求めることができる。
第861条 (支出金額の予定及び後見の事務の費用)
後見人は、その就職の初めにおいて、被後見人の生活、教育又は療養看護及び財産の管理のために毎年支出すべき金額を予定しなければならない。
2 後見人が後見の事務を行うために必要な費用は、被後見人の財産の中から支弁する。
第862条 (後見人の報酬)
家庭裁判所は、後見人及び被後見人の資力その他の事情によって、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができる。
第863条 (後見の事務の監督)
後見監督人又は家庭裁判所は、いつでも、後見人に対し後見の事務の報告若しくは財産の目録の提出を求め、又は後見の事務若しくは被後見人の財産の状況を調査することができる。
2 家庭裁判所は、後見監督人、被後見人若しくはその親族その他の利害関係人の請求により又は職権で、被後見人の財産の管理その他後見の事務について必要な処分を命ずることができる。
第864条 (後見監督人の同意を要する行為)
後見人が、被後見人に代わって営業若しくは第13条第1項各号(保佐人の同意を要する行為等)に掲げる行為をし、又は未成年被後見人がこれをすることに同意するには、後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。ただし、同項第一号に掲げる元本の領収については、この限りでない。
第865条
後見人が、前条の規定に違反し又は同意を与えた行為は、被後見人又は後見人が取り消すことができる。この場合においては、第20条(制限行為能力者の相手方の催告権)の規定を準用する。
2 前項の規定は、第121条(取消しの効果)から第126条(取消権の期間の制限)までの規定の適用を妨げない。
第866条 (被後見人の財産等の譲受けの取消し)
後見人が被後見人の財産又は被後見人に対する第三者の権利を譲り受けたときは、被後見人は、これを取り消すことができる。この場合においては、第20条(制限行為能力者の相手方の催告権)の規定を準用する。
2前項の規定は、第121条(取消しの効果)から第126条(取消権の期間の制限)までの規定の適用を妨げない。
第867条 (未成年被後見人に代わる親権の行使)
未成年後見人は、未成年被後見人に代わって親権を行う。
2 第853条(財産の調査及び目録の作成)から第857条(未成年被後見人の身上の監護に関する権利義務)まで及び第861条(支出金額の予定及び後見の事務の費用)から前条までの規定は、前項の場合について準用する。
第868条 (財産に関する権限のみを有する未成年後見人)
親権を行う者が管理権を有しない場合には、未成年後見人は、財産に関する権限のみを有する。
第869条 (委任及び親権の規定の準用)
第644条(後見人の辞任)及び第830条(第三者が無償で子に与えた財産の管理)の規定は、後見について準用する。
第4節 後見の終了 (第870条―第875条)
第870条 (後見の計算)
後見人の任務が終了したときは、後見人又はその相続人は、二箇月以内にその管理の計算(以下「後見の計算」という。)をしなければならない。ただし、この期間は、家庭裁判所において伸長することができる。
第871条
後見の計算は、後見監督人があるときは、その立会いをもってしなければならない。
第872条 (未成年被後見人と未成年後見人等との間の契約等の取消し)
未成年被後見人が成年に達した後後見の計算の終了前に、その者と未成年後見人又はその相続人との間でした契約は、その者が取り消すことができる。その者が未成年後見人又はその相続人に対してした単独行為も、同様とする。
2 第20条(制限行為能力者の相手方の催告権)及び第121条(取消しの効果)から第126条(取消権の期間の制限)までの規定は、前項の場合について準用する。
第873条 (返還金に対する利息の支払等)
後見人が被後見人に返還すべき金額及び被後見人が後見人に返還すべき金額には、後見の計算が終了した時から、利息を付さなければならない。
2 後見人は、自己のために被後見人の金銭を消費したときは、その消費の時から、これに利息を付さなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
第873条の2(成年被後見人の死亡後の成年後見人の権限)
成年後見人は、成年被後見人が死亡した場合において、必要があるときは、成年被後見人の相続人の意思に反することが明らかなときを除き、相続人が相続財産を管理することができるに至るまで、次に掲げる行為をすることができる。ただし、第三号に掲げる行為をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
一 相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為
二 相続財産に属する債務(弁済期が到来しているものに限る。)の弁済
三 その死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為(前二号に掲げる行為を除く。)
第874条 (委任の規定の準用)
第654条(委任の終了後の処分)及び第655条(委任の終了の対抗要件)の規定は、後見について準用する。
第875条 (後見に関して生じた債権の消滅時効)
第832条(財産の管理について生じた親子間の債権の消滅時効)の規定は、後見人又は後見監督人と被後見人との間において後見に関して生じた債権の消滅時効について準用する。
2 前項の消滅時効は、第872条(未成年被後見人と未成年後見人等との間の契約等の取消し)の規定により法律行為を取り消した場合には、その取消しの時から起算する。
第6章 保佐及び補助
第1節 保佐 (第876条―第876条の5)
第876条 (保佐の開始)
保佐は、保佐開始の審判によって開始する。
第876条の2 (保佐人及び臨時保佐人の選任等)
家庭裁判所は、保佐開始の審判をするときは、職権で、保佐人を選任する。
2 第843条第2項(家庭裁判所の成年後見人の選任)から第四項(成年被後見人の事情考慮)まで及び第844条(後見人の辞任)から第847条(後見人の欠格事由)までの規定は、保佐人について準用する。
3 保佐人又はその代表する者と被保佐人との利益が相反する行為については、保佐人は、臨時保佐人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。ただし、保佐監督人がある場合は、この限りでない。
第876条の3 (保佐監督人)
家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被保佐人、その親族若しくは保佐人の請求により又は職権で、保佐監督人を選任することができる。
2 第644条(受任者の注意義務)、第654条(委任の終了後の処分)、第655条(委任の終了の対抗要件)、第843条第4項(成年被後見人の事情考慮)、第844条(後見人の辞任)、第846条(後見人の解任)、第847条(後見人の欠格事由)、第850条(後見監督人の欠格事由)、第851条(後見監督人の職務)、第859条の2(成年後見人が数人ある場合の権限の行使等)、第859条の3(成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可)、第861条第2項(後見の事務の費用)及び第862条(後見人の報酬)の規定は、保佐監督人について準用する。
この場合において、第851条第四号(利益相反行為について被後見人を代表する後見監督人の職務)中の「被後見人を代表する」とあるのは、「被保佐人を代表し、又は被保佐人がこれをすることに同意する」と読み替えるものとする。
第876条の4 (保佐人に代理権を付与する旨の審判)
家庭裁判所は、第11条本文(保佐開始の審判)に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
2 本人以外の者の請求によって前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
3 家庭裁判所は、第一項に規定する者の請求によって、同項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。
第876条の5 (保佐の事務及び保佐人の任務の終了等)
保佐人は、保佐の事務を行うに当たっては、被保佐人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。
2 第644条(受任者の注意義務)、第859条の2(成年後見人が数人ある場合の権限の行使等)、第859条の3(成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可)、第861条第2項(後見の事務の費用)、第862条(後見人の報酬)及び第863条(後見の事務の監督)の規定は保佐の事務について、第824条(財産の管理及び代表)ただし書の規定は保佐人が前条第1項の代理権を付与する旨の審判に基づき被保佐人を代表する場合について準用する。
3 第654条(委任の終了後の処分)、第655条(委任の終了の対抗要件)、第870条(業務執行の方法)、第871条(後見監督人の立会い)及び第873条(返還金に対する利息の支払等)の規定は保佐人の任務が終了した場合について、第832条(財産の管理について生じた親子間の債権の消滅時効)の規定は、保佐人又は保佐監督人と被保佐人との間において保佐に関して生じた債権について準用する。
第2節 補助 (第876条の6―第876条の10)
第876条の6 (補助の開始)
補助は、補助開始の審判によって開始する。
第876条の7 (補助人及び臨時補助人の選任等)
家庭裁判所は、補助開始の審判をするときは、職権で、補助人を選任する。
2 第843条第2項(家庭裁判所の成年後見人の選任)から第4項(成年被後見人の事情考慮)まで及び第844条(後見人の辞任)から第847条(後見人の欠格事由)までの規定は、補助人について準用する。
3 補助人又はその代表する者と被補助人との利益が相反する行為については、補助人は、臨時補助人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。ただし、補助監督人がある場合は、この限りでない。
第876条の8 (補助監督人)
家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被補助人、その親族若しくは補助人の請求により又は職権で、補助監督人を選任することができる。
2 第644条(受任者の注意義務)、第654条(委任の終了後の処分)、第655条(委任の終了の対抗要件)、第843条第4項(成年被後見人の事情考慮)、第844条(後見人の辞任)、第846条(後見人の解任)、第847条(後見人の欠格事由)、第850条(後見監督人の欠格事由)、第851条(後見監督人の職務)、第859条の2(成年後見人が数人ある場合の権限の行使等)、第859条の3(成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可)、第861条第2項(後見の事務の費用)及び第862条(後見人の報酬)の規定は、補助監督人について準用する。この場合において、第851条第四号(利益相反行為について被後見人を代表する後見監督人の職務)中の「被後見人を代表する」とあるのは、「被補助人を代表し、又は被補助人がこれをすることに同意する」と読み替えるものとする。
第876条の9 (補助人に代理権を付与する旨の審判)
家庭裁判所は、第15条第1項(補助開始の審判)の本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求によって、被補助人のために特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
2 第876条の4第2項(代理権を付与する旨の審判の本人の同意)及び第3項(代理権付与の審判の全部又は一部を取り消し)の規定は、前項の審判について準用する。
第876条の10 (補助の事務及び補助人の任務の終了等)
第644条(受任者の注意義務)、第859条の2(成年後見人が数人ある場合の権限の行使等)、第859条の3(成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可)、第861条第2項(後見の事務の費用)、第862条(後見人の報酬)、第863条(後見の事務の監督)及び第876条の5第1項(保佐の事務及び保佐人の任務の終了等)の規定は補助の事務について、第824条(財産の管理及び代表)のただし書の規定は補助人が前条第1項の代理権を付与する旨の審判に基づき被補助人を代表する場合について準用する。
2 第654条(委任の終了後の処分)、第655条(委任の終了の対抗要件)、第870条(後見の計算)、第871条(後見監督人の立会い)及び第873条(返還金に対する利息の支払等)の規定は補助人の任務が終了した場合について、第832条(財産の管理について生じた親子間の債権の消滅時効)の規定は補助人又は補助監督人と被補助人との間において補助に関して生じた債権について準用する。
第7章 扶養 (第877条―第881条)
第877条 (扶養義務者)
直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。
第878条 (扶養の順位)
扶養をする義務のある者が数人ある場合において、扶養をすべき者の順序について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。扶養を受ける権利のある者が数人ある場合において、扶養義務者の資力がその全員を扶養するのに足りないときの扶養を受けるべき者の順序についても、同様とする。
第879条 (扶養の程度又は方法)
扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める。
第880条 (扶養に関する協議又は審判の変更又は取消し)
扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。
第881条 (扶養請求権の処分の禁止)
扶養を受ける権利は、処分することができない。