第2章 婚姻
第1節 婚姻の成立
第1款 婚姻の要件 (第731条―第741条)
第731条 (婚姻適齢)
男は、十八歳に、女は、十六歳にならなければ、婚姻をすることができない。
第732条 (重婚の禁止)
配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。
第733条 (再婚禁止期間)
女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して六箇月百日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。
2 女が前婚の解消又は取消の前から懐胎していた場合には、その出産の日から、前項の規定を適用しない。 成28年6月7日公布・施行
2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 女が前婚の解消又は取消しの時に懐胎していなかった場合
二 女が前婚の解消又は取消しの後に出産した場合
第734条 (近親者間の婚姻の禁止)
直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。
2 第817条の9(実方との親族関係の終了)の規定により親族関係が終了した後も、前項と同様とする。
第735条 (直系姻族間の婚姻の禁止)
直系姻族の間では、婚姻をすることができない。第728条(離婚等による姻族関係の終了)又は第817条の9(実方との親族関係の終了)の規定により姻族関係が終了した後も、同様とする。
第736条 (養親子等の間の婚姻の禁止)
養子若しくはその配偶者又は養子の直系卑属若しくはその配偶者と養親又はその直系尊属との間では、第729条(離縁による親族関係の終了)の規定により親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない。
第737条 (未成年者の婚姻についての父母の同意)
未成年の子が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない。
2 父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足りる。父母の一方が知れないとき、死亡したとき、又はその意思を表示することができないときも、同様とする。
第738条 (成年被後見人の婚姻)
成年被後見人が婚姻をするには、その成年後見人の同意を要しない。
第739条 (婚姻の届出)
婚姻は、戸籍法(昭和22年法律第224号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
2 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。
第740条 (婚姻の届出の受理)
婚姻の届出は、その婚姻が第731条(婚姻適齢)から第737条(未成年者の婚姻についての父母の同意)まで及び前条第2項(婚姻の届出)の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
第741条 (外国に在る日本人間の婚姻の方式)
外国に在る日本人間で婚姻をしようとするときは、その国に駐在する日本の大使、公使又は領事にその届出をすることができる。この場合においては、前二条の規定を準用する。
第2款 婚姻の無効及び取消し (第742条―第749条)
第742条 (婚姻の無効)
婚姻は、次に掲げる場合に限り、無効とする。
一 人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき。
二 当事者が婚姻の届出をしないとき。ただし、その届出が第739条第2項(婚姻の届出)に定める方式を欠くだけであるときは、婚姻は、そのためにその効力を妨げられない。
第743条 (婚姻の取消し)
婚姻は、次条から第747条(詐欺又は強迫による婚姻の取消し)までの規定によらなければ、取り消すことができない。
第744条 (不適法な婚姻の取消し)
第731条(婚姻適齢)から第736条(養親子等の間の婚姻の禁止)までの規定に違反した婚姻は、各当事者、その親族又は検察官から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、検察官は、当事者の一方が死亡した後は、これを請求することができない。
2 第732条(重婚の禁止)又は第733条(再婚禁止期間)の規定に違反した婚姻については、当事者の配偶者又は前配偶者も、その取消しを請求することができる。
第745条 (不適齢者の婚姻の取消し)
第731条(婚姻適齢)の規定に違反した婚姻は、不適齢者が適齢に達したときは、その取消しを請求することができない。
2 不適齢者は、適齢に達した後、なお三箇月間は、その婚姻の取消しを請求することができる。ただし、適齢に達した後に追認をしたときは、この限りでない。
第746条 (再婚禁止期間内にした婚姻の取消し)修正中
第733条(再婚禁止期間)の規定に違反した婚姻は、前婚の解消若しくは取消しの日から起算して六箇月百日を経過し、又は女が再婚後に懐胎出産したときは、その取消しを請求することができない。
第747条 (詐欺又は強迫による婚姻の取消し)
詐欺又は強迫によって婚姻をした者は、その婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
2 前項の規定による取消権は、当事者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後三箇月を経過し、又は追認をしたときは、消滅する。
第748条 (婚姻の取消しの効力)
婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生ずる。
2 婚姻の時においてその取消しの原因があることを知らなかった当事者が、婚姻によって財産を得たときは、現に利益を受けている限度において、その返還をしなければならない。
3 婚姻の時においてその取消しの原因があることを知っていた当事者は、婚姻によって得た利益の全部を返還しなければならない。この場合において、相手方が善意であったときは、これに対して損害を賠償する責任を負う。
第749条 (離婚の規定の準用)
第728条第1項(離婚等による姻族関係の終了)、第766条(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)から第769条(離婚による復氏の際の権利の承継)まで、第790条第1項ただし書(出生前に父母が離婚した時の子の氏)並びに第819条第2項(裁判所による親権者の定め)、第3項(子の出生前に父母が離婚した場合の親権者)、第5項(裁判所の協議に代わる審判)及び第6項(裁判所による親権者の変更)の規定は、婚姻の取消しについて準用する。
第2節 婚姻の効力 (第750条―第754条)
第750条 (夫婦の氏)
夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。
第751条 (生存配偶者の復氏等)
夫婦の一方が死亡したときは、生存配偶者は、婚姻前の氏に復することができる。
2 第769条(離婚による復氏の際の権利の承継)の規定は、前項及び第728条第2項(夫婦の一方が死亡した場合の姻族関係の終了)の場合について準用する。
第752条 (同居、協力及び扶助の義務)
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
第753条 (婚姻による成年擬制)
未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。
第754条 (夫婦間の契約の取消権)
夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
第3節 夫婦財産制
第1款 総則 (第755条―第759条)
第755条 (夫婦の財産関係)
夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約をしなかったときは、その財産関係は、次款に定めるところによる。
第756条 (夫婦財産契約の対抗要件)
夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出までにその登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。
第757条 削除
第758条 (夫婦の財産関係の変更の制限等)
夫婦の財産関係は、婚姻の届出後は、変更することができない。
2 夫婦の一方が、他の一方の財産を管理する場合において、管理が失当であったことによってその財産を危うくしたときは、他の一方は、自らその管理をすることを家庭裁判所に請求することができる。
3 共有財産については、前項の請求とともに、その分割を請求することができる。
第759条 (財産の管理者の変更及び共有財産の分割の対抗要件)
前条(夫婦の財産関係の変更の制限等)の規定又は第755条(夫婦の財産関係)の契約の結果により、財産の管理者を変更し、又は共有財産の分割をしたときは、その登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。
第2款 法定財産制 (第760条―第762条)
第760条 (婚姻費用の分担)
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
第761条 (日常の家事に関する債務の連帯責任)
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。
第762条 (夫婦間における財産の帰属)
夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
2 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。
第4節 離婚
第1款 協議上の離婚 (第763条―第769条)
第763条 (協議上の離婚)
夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。
第764条 (婚姻の規定の準用)
第738条(成年被後見人の婚姻)、第739条(婚姻の届出)及び第747条(詐欺又は強迫による婚姻の取消し)の規定は、協議上の離婚について準用する。
第765条 (離婚の届出の受理)
離婚の届出は、その離婚が前条において準用する第739条第2項(婚姻の届出)の規定及び第819条第1項(協議による親権者の定め)の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
2 離婚の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離婚は、そのためにその効力を妨げられない。
第766条 (離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
3 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。
4 前三項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。
第767条 (離婚による復氏等)
婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。
2 前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から三箇月以内に戸籍法 の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。
第768条 (財産分与)
協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない
3 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
第769条 (離婚による復氏の際の権利の承継)
婚姻によって氏を改めた夫又は妻が、第897条第1項(祭祀に関する権利の承継)の権利を承継した後、協議上の離婚をしたときは、当事者その他の関係人の協議で、その権利を承継すべき者を定めなければならない。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所がこれを定める。
第2款 裁判上の離婚 (第770条―第771条)
第770条 (裁判上の離婚)
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
第771条 (協議上の離婚の規定の準用)
第766条(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)から第769条(離婚による復氏の際の権利の承継)までの規定は、裁判上の離婚について準用する。